わたしはベロニカ。
どこにでもいる、ふつうのダックスのおんなのこ。飼い主の言うことをとてもよくきいて、ほめられたら意味もなくうれしくてしょうがなかったり。
お客さんが来たらこうやって、席をゆずってあげる。そんな気遣いもあたりまえにできるわ。(あ、こいつは客じゃないけどね)
きょうはたまたまパソコンのグラフィックボードが吹っ飛んだので取り換えにやってきてくれたの。うちのママとは20年以上も一緒に仕事をしているただのおたくよ。そう、としくん。
お礼に「あんこだらけのヘビーなぜんざいが食べたいのだ」のリクエストにこたえて、どろどろのそれをつくってあげたみたい。
売れない写真を撮るのはストレスだと、ママは言うわ。わかる気がする。そしてわたしの最大級のストレスといえば、毎日のお散歩。
ママは毎日3時になると、わたしを引きずって堤防道まで連れて行くの。それが何よりもいやなんだけど。
愛犬が嫌がることを毎日する飼い主って、どうよ?しかも同じ時間に。わたしは3時が近づくと、だんだんゆううつになって、悲しい気持ちになるのよ。
それもこれも、天気がいいせいね。空はこんなに晴れ渡り、暖冬のせいでなまじ暖かくまるでとってつけたような「散歩日和」。こうなったら後はママの気が済むまで歩いて家に早く帰るというのが得策ね。
これも犬に生まれた宿命なのだわ。次は人間に生まれ変わりたいなんてもう言わないわ。そうね、鳥でいいわ。そして待ちに待ったその瞬間がようやくやってきた。
「ベリー帰ろうか」
わたしはベロニカ。
どこにでもいるダックスのおんなのこ。今日はうれしい知らせがあったわ。「雨音」よ!散歩に行かなくて済むのね。
何でもないようなことがわたしには一大事なのよ。