鹿肉はタタキで

わたしは、ベロニカ。

ママが鹿肉を販売することになって、驚くおんなのこ。

鹿肉だけじゃないわ。イノシシも熊も。

ママだって、朝、丹波に向かう頃には

そんな展開になるとは思ってもみなかったの。

 

道の駅「まほろば」では菊芋が、完売しそうで

すぐに、「新しいものをもってきてちょうだい」と連絡が入ったの。

毎月、売り上げを伸ばしているのだから、すごいわね。

ようやく、雪がなくなったとのことで、久しぶりに菊芋を取りに行くの。

でも、出発したのはもう3時前だったので、寄り道はしてくれないわ。

先月まで大雪だったという丹波市だけど、ぜんぜん大丈夫だわ。

前回、ここへ来た時に、ママは農家さんに

「鹿肉を売ってるところを知りませんか?」

と、犬用に新しいおやつを作ろうとたずねていたの。

農家さんはそのことを覚えていてくれて、マタギさんのところへと

連れて行ってくれたわ。

マタギというのは、東北地方などで、古来の猟をして暮らす人のことで、

現代のハンターと違って、独特の宗教観(命を尊ぶ)をもっているというの。

ママが紹介された人がほんもののマタギかどうかは、知らないけれど

少なくとも現代のハンターとは一線を画することは明らかだったわ。

 

マタギさんは、ママたちが到着するのを待っていてくれたみたいで、

「裏山のワナに鹿がかかっているから、見ていくか?」と。

女性とは勝手な生き物で、ビフテキは食べるけど、牛がさばかれるところは

決して見たくないものなの。

ママも例外ではなく、あわれな鹿の姿なんて、見たくなかったわ。

幸いなことに、陽がくれてきたので、今からじゃ、山に入るのは危険、

ということで、ワナにかかった鹿を見に行く会は中止となったわ。

さて、それから、冷凍庫から去年とれた鹿肉を見せてくれたマタギさん。

ママは犬用の切り落とし肉が欲しかったのだけど、

なんともじょうとうなヤツが新聞紙にくるまれていたの。

几帳面にさばかれたもも肉。

ママは愚問だと知りつつも

「誰がさばいたんですか?」

マタギさんは当然自分だといったわ。

うわ、想像してしまう。

とはいえ、あまりにもいいお肉だったので、ワナにかかっている鹿を

1頭買いしてしまったの。

マタギさんは「がんばって販路をふやしてください。」と

あっという間に、ママはバイヤーになってしまっていたわ。

マタギさんは特別に貴重だという熊の肉をお土産にくれたのよ。

こちらも、きれいな肉質で見るからにおいしそう。

マタギさんには、ワナの鹿は冷凍保存しててもらって、次のきくいも納品時に

取りに来ると約束して、ついでに犬用に骨も残しておいてと頼んだわ。

農家さんからは、甘い新キャベツやダイコン、フキノトウをおみやげに

もらって、丹波を後にしたのだったわ。

さて、最初は犬用だといっていた鹿肉。

そんなことは、なかったことにするように、ママは人間用の

ジビエ料理に取りかかったわ。

マタギさんにも料理方法を聞いてきたのだけど、

「焼き肉のたれで炒めるか、佃煮にするといい」

それでは、あまりにももったいないでしょって、タタキにすることに。

両面、側面を焦げ色がつくくらいに、焼いたらスライスするだけ。

塩コショウして、ソースはシンプルなショウガ醤油。

わたしはあまりにもいい匂いがするので、伏せをして待ったわ。

まだなの?

鹿肉は体にとってもいいのよ。

低カロリー、高たんぱく。

はっきり言って、牛肉より自然な味がしてとてもおいしいわ。

けもの臭?

まったくしないわ。

ジンギスカンの方がけものくさい。

牛肉に似た味だけど、薬品ぽい味がまったくしないの。

あまりにもおいしくて、1kgはあっという間に

としくんやおにーちゃんの胃袋に収まってしまったわ。

わたしは、ベロニカ。

というわけで、鹿肉を販売することになったママ。

てんちゃんの教えてくれたメルカリではイノシシ肉が売られていたわよw

今回の販売予定は全部で2kg。

100g500円よ。

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