ミシン運なき人 - わたしはべロニカ

わたしは、ベロニカ。

耳の毛のからまりを、取られるおんなのこ。

ママは犬ともに教えてもらった方法で

根元の毛たぼを、ちまちまとファーミネーターで

ほどいていくの。

痛くはないのよ。

根本の毛を持っててくれるから。

このファーミネーターは、犬とものを

借りパクしているんだけど、ね。

おにーちゃんのステテコを作ってから、

次にとしくんの、カーゴパンツを作ろうと

挑戦しているママ。

ところが、なんてこと、ミシンが動かなくなってしまったの。

土曜日なので、販売店も、メーカーも電話に出ないわ。

ママは、ミシン修理のお店をさがして

こわれたミシンを持ち込んだわ。

ホームページに持ち込み修理　￥３０００ってあったの。

ママのミシンを見て、店員さんは言ったわ。

「１，２万のミシンでしょ。

こわれるのは当然です。」って

「修理代は１万円です、で、またすぐこわれますよ。」

「ミシンは、最低５，６万は出さないとね、

しかも、ちゃんと購入店で使い方を教えてもらわないとダメですよ。

どこで買ったんですか。」

「インターネットで買いました。」と声が小さくなったママ。

「はぁ～楽天とかですね。

この前、うちでミシンを買ったお客さんも

使い方を教えてもらってよかったわって

おっしゃってたくらいですよ。

とにかく、買ったところで修理してもらったら

いいんじゃないですか。

うちで、修理しても保障できませんから。」

ママは、ぜったいこの店では買わないと

固く誓ったわ。

家に帰ってからは、新しく買った布を見ては

ためいきばかり。

作りかけのカーゴパンツ。

「いったい、この土日をどう過ごせというのか。」

愚痴るママ。

そしてママは吐き捨てるようにいいはなったわ。

安物買いの銭失いとは

よく言ったものだわね。

そして、おにーちゃんに、付き合ってよ、と言って

手芸のトーカイへ行ってしまったわ。

まずいわね。

非常にまずいわ。

案の定、

ママは、トーカイのミシン売り場の前で

５，６万のミシンを、がん見していたわ。

そして、今月はとっくにおこづかいを

使い果たしたというのに、

カードをきってしまったわ。

それから、いっきにおにーちゃんのステテコ２号を

縫い上げて、高らかに、笑い声をあげていたの。

「５，６万のミシンはぜんぜん、違うわね！！」

さて、月曜になって、こわれたミシンの修理のために

販売店に電話を入れたわ。

「６月４日に購入したミシンなんですが、

下糸を持ち上げなくなったんです。」

すると、電話先の若そうな女性は

「それは、ボビンの向きとつけ方が間違っていますね。」

「いえ、最初は縫えたので、間違ってはいません。」

「じゃあ、上糸の通し方が間違っていると思います。」

「ちょっと、お待ちください。」

そういうと、若い女性は少し年配の女性に

バトンタッチしたの。

「もしもし、上糸が、てんびんにかかっていないせいですよ。

今から、わたしが言うとおりにミシンを動かしてみてください。」

「今、ミシンが目の前にありませんので。」

「じゃあ、何時だったらいいですか？」

「１時で、お願いします。」

そして１時には、全部準備して電話を待つママだったけれど

電話がかかってきたのは、１時半をまわっていたわ。

「ミシンの件でお電話してきた方ですか？

ミシンが使えないということで、よろしかったでしょうか

上糸をガイド通りにかけなおしてみてくれますか

でんびんに糸がかかっていないと、下糸があがりませんので。」

「そのとおり、しています。」

「ちゃんと、覗き込んでみてください。」

「見てます。」

「・・・・・・

じゃあ、送ってもらうしかないですね。

買ったのはことしの６月？

では、保証書におかしい現象を書き込んで

あ、糸は今の状態のままで、

どんな使い方か見てみますので。」

うちのママはカスタマーサービスについては

うるさい人だけど、今回ばかりは、

販売店がやっとミシンを受け取ってくれるということで

十分、満足したわ。

さて、宅配便に梱包したミシンを持ち込んで、

それから、５，６万のミシンの

ボビンががらがらと変な音がでるので、

それもトーカイへ持ち込んでみてもらうのよ。