わたしは、ベロニカ。
旅行を楽しむおんなのこ。
旅館をチェックアウトする時、旅館の人に
たくさんの鳴門金時をもらったわ。
車番のおじさんにもお礼を言って、
さあ、出発よ!
困ったことに、まさかのノープランなのよ!
ママはお土産を買いに行きたくて、
おばあちゃんは観光か釣りなら、なんでもOKで
としくんは、次の日が忙しいので、まっすぐに家に帰りたいの。
そして、兄は何もしたくないの。
まあ、この猛暑日に外で何かをすること自体、まちがった選択ではあるけどね。
そうして、考えのまとまらないまま、車を走らせたら、
鳴門公園に入ってしまったわ。
どんなに便利な時代になっても、そのツールを使って
調べておかないと、道の駅ひとつ見つけられないのよね。
仕方なしに鳴門公園に車を駐車したわ。
お土産物くらいは、売ってるかもしれないし。
とりあえず、記念館らしきものが見えるから行ってみることに。
少し歩いては日陰で休憩しないと
呼吸が苦しいくらいの暑さだわ。
そして、何かに引き寄せられるように
うずの道へと向かって行ったわ。
日陰を見つけては休憩しもって、
体力を温存するのよ。
ところで、としくんとおにーちゃんがいないわ。
ふたりは、どさくさにまぎれて車から下りなかったのね。
後ろを振り返る余裕もなかったし
とにかく、うずの道とやらを攻略してしまうことにしたの。
なるほど、やっとわかったわ。
大鳴門橋の下を歩いてうずを見るということね。
おばあちゃんはというと、あちこち写真を撮ってまわって
体力がありあまっているようだわ。
渦潮には、見ごろの時間があるのね。
どうせ来るなら、ちゃんと調べてくればよかったのに。
今は10時半だから、ぎりぎりかしら。
わんこは、だっこなら中に入れるの。
まるで淡路島の途中まで、
海の上を歩いていくようなものね。
ガラスばりで、下が見えるわ。
ママは、荷物が重たくて、休憩所のたびに
ばてていたけれど、
おばあちゃんは、ずーーーっと元気だわ。
案の定、鳴門のうずしおは、原型をとどめていないようだわ。
真上から見ても、ぐずぐず・・・。
ほんとうなら、こんなかんじ。
いつでも、うずまいているのだと思っていたママは
おばあちゃんを責めていたわ。
渦の道に入場してしばらくたってから、
おばあちゃんは、前に社員旅行で
ここへ来たことがあるという事実がわかったの。
知っているんだったら、来なくていいじゃないの、というのがママの訴え。
そしてどうせ来るなら、渦のぐるぐる巻いてる時間に来たかったわ、って。
どっちにしても、もう遅いわ。
でも遊覧船に乗ってまで、うずを見に来た人は
お気の毒だわ。
うずがないんだもの。
それから、この長いうずの道には自動販売機のひとつもないから
こんな時期は飲み物を持って入ることをおすすめするわ。
うずの道の修行を終えて、記念館の方に戻ると
としくんが、日陰で休んでいたわ。
わたしは、ベロニカ。
なんだか旅行というよりも、暑さのせいで、
かなりのサバイバルだわ。