わたしは、ベロニカ。
3日前だったかしら。
ママの心臓が凍ってしまう出来事があったのを
しれーーーっと見ていたおんなのこ。
それは、いつものように、公園で暗くなるまで過ごしたあと、
ひなちゃんとりんちゃん、そしてぷりんちゃんと連れだって
旧国道側の道から帰っていた時のこと。
ひなちゃん、りんちゃんと曲がり角で別れて、ぷりんちゃんと少し歩いていたわ。
立ち止まりがちだったわたしにママは「さあ、帰るよ。」
と、ここまでは、いつもとなんら変わりのなり光景だったの。
ところが次の瞬間!
強く引っ張られたわけでもないのに、ハーネスがぽろっと、落ちてしまったの。
クルマの通りの少なくない道だったせいもあって、
ママはすぐに「ベリーだっこ!」と言ったわ。
わたしは、ママの腕に前足をかけてだっこしてもらったわ。
次の瞬間、わたしたちの横をクルマが通り過ぎて行ったの。
これには、ぷりんちゃんのママもびっくりして、無事だったことに胸をなでおろしてくれたわ。
それにしても買ったばかりのハーネス。
店員さんにきっちりサイズまで合わせてもらっていたのよ。
ペット用品は安くで仕入れられるというのに、命にかかわるものだから
わざわざフィッティングをして購入したというのに・・・。
だいたい、首輪はすっぽぬけするから、ハーネスにしたというのに、
一瞬ですぽっと、ぬけるものなのかしら。
ゆいいつの目撃者である、ぷりんちゃんのママは、
「べりーちゃんが前に手を出したら一瞬でぬけてたわ。」
と言っていたわ。
きつく締めすぎていたからいやがってぬいだのだわ、とか
縄ぬけの天才だわ、とか
いろいろ言われたのだけど、ママは解せないまま、
ハーネスを改造するか、誰かにあげるか悩んでいたわ。
そこへ、ちょうど体格の小さい柴犬のはなちゃんがいたので、
試着してみてよかったら、使って!と言ったわ。
足の短いダックスにはあげられないけれど、足の長い子なら大丈夫ってことで。
はなちゃんのママは、ハーネスを辞退しながら、ここで、まことにすばらしい意見を言い放ったわ。
「買ったお店にもっていったら?」
確かに。
返品できないにしても、同じようなことがよそのダックスでおこっては問題だし。
翌日、わたしたちはペットパートナーズに行くことにしたわ。
店に入ると、ちょうどハーネスを試着させてくれたおねーさんがいたので
ママは「覚えていますか?!」と事のいきさつを、ことこまやかに、
返品してほしいわけじゃありませんと、付け加えながら説明したわ。
おねーさんは、「そっか~ぬけちゃったんだ。」とニュートラルに事情を聞いていたわ。
そして、ママは、すっぽぬけたハーネスをつけてみせたりとしていたのだけど、
つけたり、はずしたりしている一瞬、ノーリードになったので、わたしはお店を飛び出したの。
自動ドアを開けて。
この時はママの制止もきかずに。
またしても、ママの心臓は凍りつきそうになったわ。
でも、外で兄が待っていたので、兄につかまってしまったのよ。
それから、また店にもどると、今度は店長さんらしき人が
「さっきから話を聞いていたのですが、これは問題ですので
メーカーに伝えます。
そして、ハーネスの代金は返金します。」と。
「なにより、犬が事故にあわなくて本当によかったです。」と。
神対応だわ。
ママは「ありがとうございます。
それでは、はずれないハーネスを購入しますので、
試着させてください。」と言ったわ。
その新ハーネスはミリ単位で調整できるもので、シリコンのような素材だったので
川遊びにも良さそうだったわ。
わたしは、ベロニカ。
神対応で得た信用というのは、目先の利より、よほど大切なものなのね。
そして新ハーネスは、取り寄せとなったのだけど、カタログを見たら
ママの仕入れている問屋であつかっている商品だったのね。
ママはペットパートナーズであえて定価で購入する自分を
神対応だわと言っていたわ。
わたしも一度しか行ったことないけど
一発であのお店好きになりました。
それにしてもベロちゃんはお母さんをハラハラさせる天才ね。
うちのママはね。
夜にわたしの夢をみて
うなされているわ。
けけけ