わたしは、ベロニカ。
居候の出ていった夕暮れの部屋で
ベッドを独り占めする女の子
そう、居候とはとしくんのこと。
としくんがうちで居候を始めたのは1年10ヶ月前のこと。
事務所をたたむことになった際、事務所に住み着いていた
としくんをうちへと連れて帰ってきたのがはじまりよ。
そして12月8日、彼は出ていったわ
日本にはきれいなことわざが、たくさんあって
その中でもわたしが好きなのが
「飛ぶ鳥、あとをにごさず」というもの。
だからマンションを出る時も、ぴかぴかにしてでたものよ。
ところがよ、うちの居候ったら
「とりあえず、いるものだけ持っていくわ」
これには、ママは相当おこって
「うちは、あんたの実家じゃねえんだよ」
とぶちぎれていたわ。
引っ越し費用とかをママに工面させているので
としくんは「そとづら」は、しおらしくしていたけど
じつは心の中ではウキウキで早く出たくて仕方なかったの。
結果的にとしくんのでていった部屋はごみだめもいいところ。
ベッドの下にはベビースターラーメンが大量に散らばっていて
床にはインスタントコーヒーがコールタールの様にこびりついて、
窓際には大量の抜け毛がどっさり・・・。
まさに、この世の物とは思えない汚さ。
だけど、ママはやっとそうじできるよろこびをかみしめていたの。
これであたらしい1年をきれいにして迎えることができるんだわ。
新居の方の準備もたいへんだったのよ。
とにかくママはとしくんが、ぼけら~としてるので
気に入りそうな物件をさがして、内見へつれてって
ふとんやら、こたつやら、当面の食料品やらを選び、
そして、買い与えて・・・
居候が出ていった
いったい、いくら金かかるおっさんなのかしら。
だけどこれでとしくんも、すっきりした気持ちで
新年を迎えることができるのだわ。
けっして短くはなかった居候生活で
としくんは体調をこわし、20kgも痩せたのだから。
ほんとうに、よかったね♪
そうそう、としくんが今度新しく借りた物件は
売布駅まで4分。
一戸建ての家を部屋貸ししてくれているので、建物がしっかりしているの。
部屋はワンルームになるのだけど、トイレ・お風呂は別でリフォーム間もない感じ。
家賃はなんと3万3千円。
物件が掘り出し物すぎて、笑えるわ。
わたしは、ベロニカ。
やつが、このきれいなワンルームをどこまで汚すのかが見ものだわ。