わたしはベロニカ。
おばあちゃん、兄、そしてママと暮らす
かわいいダックスフントのおんなのこ。
自分で自分を「かわいい」というおんなは可愛くないというでしょ。
わたしは例外だわ。
そうそう、ということでうちはわたしを入れて4人家族なのだけど
じつは、もうひとり隠れ家族がいるの。
そう、としくん。
前はうちに居候していたので、家族扱いなのよ。
今はとある隠れ家でひっそりと暮らしているので
みんなの公園に出没することはなくなったけど、
買い物に連れて行ったりと、いろいろ手がかかることには
かわりはないわ。
この夏ね、そんなとしくんのおばあちゃんが亡くなったの。
早くにお母さんを亡くしたとしくんのお母さん代わりだった
やさしいおばあちゃん。
としくんはすぐに名古屋へ帰ることになったわ。
ところが、時はお盆のまっ最中。新幹線がとれるはずもなく。
いろいろ調べた結果、高速バスで帰ることにしたのよ。
引用元:https://www.wikiwand.com/ja/WILLER_EXPRESS
高速バスといえば、しんどい、きゅうくつ、疲れるっていうイメージだったけど
いまどきは違うらしいわ。
飛行機のエコノミークラスより、よほど快適らしいの。
しかも、繁忙期でも大阪-名古屋が3,000円。
割引を利用すれば600円で行くこともできるんだって。
引用元:http://travel.willer.co.jp/seat/reborn/
名古屋ではしめやかに家族葬がとりおこなわれたそう。
寂しいけれど、もう100才に近いおばあちゃんだったから
心穏やかにお見送りできたのだというわ。
10年ほど先に旅立ったおじいちゃんとは、いつも仲がよかったから
また一緒にいれるってことね。
いつだってニコニコしていて、「ありがとう、ありがとう」といっていた
おばあちゃん。
わたしもママもそんな老後にしたいねって
つくづく思ったわ。
さて、それからが大変。
わたしたちは家族総出で、としくんを大阪まで迎えに行くことになったの。
バスの発着場はスカイビルよ。
いえね、最初から迎えに行くつもりはなかったのだけど
とても疲れてそうなとしくんのLINEの文字に(どんな文字だぁ?)
試しに「なんだったら迎えにいこうか?」っていっちゃったのよ。
「いや、大丈夫、電車で帰れるから」って
普通は言うでしょ。
なのに、としくんは「あ、ありがとう」とあっさり言ったわ。
高速が渋滞していたこともあってスカイビルで待つこと30分。
近未来的なバスが、太ったオタクをのせて帰ってきたわ。
快適なバスのはずだけど、としくんにとっては
ただの禁煙地獄だったようね。
バスから降りるなり、喫煙コーナーへ駆け込んでいたわ。
それから、一応としくんに「何か食べたいものある?」って
聞いたら、案の定「スシローへ行きたいのだ」とのたまったので
最後まで良きにはからうことにしたのよ。
わたしはベロニカ。
こうやってめんどうくさがりながらも、つきあってあげるところが
隠れ家族とよぶ「ゆえん」だわ。